クーデター下のミャンマーから ― 2021年2月20日

ニュース

2021.02.23

アイクラフトのミャンマーのスタッフから、現地の状況について続報がありました。
報告を原文のまま掲載いたします。


偏った報道

ミャンマー国営放送では、暫定政権の政策、各新大臣の動向、他国閣僚との電話会議の報道、デモ隊についての報道は殆ど報道なく、現暫定政権のアピール部分だけを報道されており、殆どの人はこの報道に関心がないと思われます。
ケーブルテレビでNHK World Premium、インターネットでYahooニュースなどを見て違和感があるのが偏った報道です。
各国のニュースを観ていると、政変を起こした軍及び軍事政権は【悪】、デモを行い暫定軍事政権に反抗することは【善】という前提での報道がされています。
私自身外国人ですので選挙権はありませんし、ミャンマーの政治に関心がある事でもなく、政権が変わり政策が変わる事でのビジネス上の影響に臨機応変に対応する必要があり、当面は前NLD政権と暫定軍事政権の情報を収集し客観的に判断していく為には、情報源の一つとなる報道はもっと相互の情報を報道する必要があると思います。
報道の偏りの1例としてデモ隊による死者が出たという痛ましい報道です。
デモ隊に参加していた20代の女性が警察の発砲により重体後に死亡、14歳の男性が同じく警察の発砲により死亡という痛ましい事件の報道です。
二人共まだ若く人生をこれから楽しむことができるはずの年齢です。
非常に残念なのは、14歳のまだ子供がなぜデモ隊に参加し死亡しなければいけなかったかということです。子供だからデモ隊に参加してはいけないというルールがないとしても、デモの主催者は良し悪しの判断を誤る可能性がある若年者には、もう少し気を配る必要があり、危険な行為をさせないなどの監視管理が必要だったのではないでしょうか?
この二人が受けた銃弾はゴム弾?実弾?報道は靄をかけています。今回の政変に反対する人達やマスコミはあたかも実弾を使ったと報道したいのでしょうが、実証が取れないために靄をかけた報道になっています。
家族がフェイスブックを見ていると警察官にインタービューしているものが掲載されていたそうです。
あたかも現在拡散されている情報(中国がバックアップしている)(軍と警察が実弾を使って抑え込みしている)が事実であるという掲載の部分だけを抜粋してみます

  1. (MC)中国軍と警察がミャンマーに入り暫定軍事政権をバックアップしていてデモ隊と対峙しているそうですが?
    (警察返答)ミャンマー国内の内政問題に中国や外国から軍や警察が来るはずがないでしょ
  2. (MC)実弾を使っているとのことですが。
    (警察返答)我々はデモ隊の行き過ぎた行為には当初放水で対応してきました、現在はゴム弾の銃を持つ部隊もいます。危険性があると判断した時には使用しますが、実弾使用は認められていません。
    (警察質問)ところで、あなたはなぜこういう質問を聞くのですか?
    (MC) しどろもどろしながら、フェイスブックなどでみんなそう言っているので、(答えに窮していきます)

この後当たり障りのない質問になっていったそうですが、家族がこのフェイスブック動画を観て言ったことは、軍事政権は嫌だけど、こうやってNLD党関係者や応援している人達は、自分達が拡散している真実かどうかわからない情報を拡散することは、私達に恐怖を植え付けたり、偽情報(アメリカ軍がすでにミャンマー近海にきていて、いつでもミサイルをミャンマー軍に打ち込み軍を壊滅させる、CDM(Civil Disobedience Movement、市民の不服従運動)活動をした人達には海外からの寄付援助でお金が支給される等)で安心させたり、私達の生活を混乱させていることがなぜわからないの? とも言っていました。

警察官の死亡

一方、国営テレビでは一昨日警察官が偽警察官と間違われ、数人(反暫定政権者、自警団と称する人達)から殴打され死亡したことが報道されていました。
この事件も痛ましい事件ですが、海外で報道されていないと思います。
偽警察官に間違われて殴打された理由は、現在警察官の制服を着た偽警察官がいるという情報拡散からです、一つには軍が警察官の制服を1万人以上に着用させて警察官としてデモ隊に対峙させている(デモ隊に対抗する前線最前列は警察隊で、軍隊は警察の後ろに待機しています)、或いは恩赦で解放された元服役者たちが偽警察官になって悪事を働いている、偽警察官は軍の人間或いは元服役者で危険であり軍の人間であれば懲らしめる。ということからだそうです。懲らしめるが度が過ぎて殺人になる現象です。
デモ隊参加者に死亡者が出たという報道は、待ってましたと言わんばかりに報道拡散され、暫定軍事政権と警察がデモ隊に強硬手段を取っているなどの報道が競って報道されており、警察官が暴力を振るわれた報道は皆無です。
警察官も人間であり、ミャンマー人であり、自分が従事する警察官という仕事を全うしているだけであり、人の命に危険性がある事は誰もしたくないはずです。暴動化しそうになった時には一人の人間として、自分の命の危険性を感じれば防衛することは当然だと思われます。警察官や軍の前線にいる人たちは、デモ隊が憎いわけでもなく過剰防衛にならなければ、暴力行為は生まれないでしょうし、警察隊に対峙している人達が警察隊を挑発したり、暴動気配を見せなければこういう行為は起きないと思われます。

2つの性格のグループ

反暫定軍事政権の人達は大きく分けて二通りに分かれていると思います。
非暴力を基本に暫定政権にデモや座り込みなどで自己主張をする人達、かたや、この騒動に乗じてただ単に自分がやりたいことをやっている人達、この二つの性格が違うグループの言動は区別をして情報発信することが大切だと思われます。
ミャンマーから或いは他国からミャンマー人に限らず、外国人からも今回の政変に関して、現状情報を発信されていますが、この方々の情報発信は、反暫定軍事政権に対する人達だけの言動と理論を称賛、賛美、悲哀など偏った情報を発信されていることに違和感を覚えます。
平和的な行為で暫定軍事政権に反対するグループとやりたいことは何でもやるというグループを一色単に報道することは誤解を生じさせる元凶になっています
CDM活動を海外では美徳に報道されているようですが、CDM活動要望を拡散しているグループと、反強制的な行動をとっているグループとは性格が違います。
実情はCDM活動をせずに通退勤する人に対し要望依頼するのではなく、CDM活動に従わず朝勤務先に入っていく人を大勢で取り囲み、或いは勤務先から夕方退勤する人達の写真を撮って【CDM活動に従わない人】としてフェイスブックなどに掲載し誹謗中傷するということが起きています。
このような行動を起こしているのは前述の後者の人達であり、NLD党自体は抑止することができていません。
今回の政変で外国の方々は、反軍事政権として、国民とNLD党は一体と思われていると思いますが、NLD党自体の人気と求心力はあっても、統率力及び抑制力がなく、選挙時にNLD党、アンサンスーチー氏は談話として、社会経済と政治は切り離すべきであり、ミャンマー人同士の争いで国を混乱させてはいけないと話していました。NLD党自体もここまでのCDM活動強制は望んでいなかったはずですが、現状は管理指示、指導できる人材がなく、民衆が起こした今の流れに便乗することで、国内或いは各国からの応援指示を受けて政権奪取をしたいという意向が読み取れます。
ある外国人が掲載していたインターネット上のCDM活動説明で、CDM活動は反暫定軍事政権に対する方策として効果があり、この活動をすることで国民の通常生活には大きな問題、混乱は起きていない。という掲載がありましたがとんでもない情報です。前述のようにCDM活動に従わなければ辱めを受け、仕事がないために日雇いでの日当がもらえず、周りから高額な利子でお金を借り、その日の食事を周りの人から分け与えてもらっている人達がいます。
一般の方も含め政府機関、警察、軍隊に従事している人達がCDM活動に参加することは自己責任で自発的に参加するものであり、強制するものではないと思います。
CDM活動をしないことで辱めを受けることを恐れ、政府関係職や軍隊の人達がCDM活動を行えば、職を失うばかりでなく住む家(官舎に住む人達)を失ってしまう可能性があります。全て自己判断で行っていることであり、CDMを強制している人達は誰も責任は負わないのが現実であり、CDM活動を美化すことはいかがなものかと思います。
暫定軍事政権を倒し、NLD党が政権を奪取した時には元通りに職にも就けるし給料も支給されるという情報も拡散しているそうです。
1例ですが、電力省従事者がCDM活動行った場合に起こりえる問題として、電気供給です。毎月20日過ぎに電気代支払いをしていますが、電気代請求書配布、電気代徴収がこのCDM活動混乱で滞足り、電力供給がストップした場合、停電が起きる可能性があります。2007年のデモ隊出現時には電気も供給されなかったそうですが、今回は停電がないのが唯一の救いです。
暫定軍事政権としては理由付けが容易で、CDM活動に政府関係者実務者が参加することで、通常業務ができず電気供給ができないという理由付けができ、通常生活に多大の影響が出るのは間違いなく、停電になったら一般家庭の不自由さだけでなく、社会全体が混乱を起こしていくことが予想されますが、暫定軍事政権が悪いという理論付けになると思われます。
2月22日よりCDM活動として、殆どの市場、ショッピングセンター、一般のお店など店を閉めるという情報があります、情報がどこまで信憑性があるかわかりませんが、この情報が拡散され買占めなどが始まり混乱をきたすもとになっています。

ミャンマー人同士の争い

ある部族の人と話していると、今回のクーデターは自分たちに関係ない、ビルマ族同士の戦いであると一言で表現していました。なるほど、ビルマ人である軍と反軍の権力争いともいえます。
ある少数民族党は、前NLD政権発足時の選挙時にNLDから約束を反故にされ、NLD候補者を擁立され、この地域の少数民族党の当選者の方が多かったにもかかわらず、県知事、市長などをNLDから選出し政権を運営していったNLD党に対する反感は今でも残っており、反NLD党ともいえますが、軍の党との連携は最も愚策だともいっています。

落としどころ

暫定軍事政権も2008年等に制定された法律を盾に今回の政変を肯定化していますが、この理由が世界に認められるはずがなく、クーデターという強攻政変を行ったことで世界各国からの非難を受けていることで、1年後の選挙実施を約束することで落としどころを模索することになると思われます。
ただ、今のデモやCDM活動などの現状が続くと、暫定軍事政権は国の治安を守る為などの理由付けで暫定軍事政権を延長し、選挙を延期する可能性があり、暫定軍事政権と交渉ができる組織が早急に必要であり、国連などの組織と共にこの国内組織は反暫定軍事政権の人達を納得させ鎮静化させていくという大きな役割も担っています。
国軍は以前に人道に反するという国連決議された経緯があり、国連安保理の圧力に最も恐れているために、人道的な政権運営を前面に出していくと思われますが、今のところ1年後の選挙に向けての準備、下交渉がどこまで進んでいるかは見えてきません。
前選挙で与党として過半数以上の議員数を獲得したNLD党の主要メンバーは現在拘束されており、選挙に関する交渉ができているとは思えず、国連などが暫定軍事政権と交渉しているものとみられます。
今回の政変で暫定軍事政権が発足した理由は不正選挙ですが、選挙投票時に国連を含め各国から選挙監視委員がミャンマーの選挙を監視していました。日本からも監視団が来ていて、選挙は平和的に民主的に行われたと選挙後に発表、テレビにも出演されていましたが、この情勢の中、なぜ未だに選挙監視委員会として不正選挙は無かったということなど、何も発言されないのか不思議なところです。
暫定軍事政権が一年後に選挙を行ったとしても、軍の党(USDP)が政権をとれる議席を獲得できるとは思えません、ただし、暫定軍事政権の役割としては、NLD党を弱体化させるために今回の政変によりアンサンスーチー氏を拘束し有罪にすること及び政界から追い出すことに傾注すると思われます。次回選挙時にはアンサンスーチー氏の出馬は年齢的なこともありますが、有罪判決が出た場合は立候補を認めないなど、条件を付けて立候補させないようにする可能性もあります。
暫定軍事政権との交渉及び次回選挙の為には、早急にNLD党はアンサンスーチー氏がいないという前提での党の立て直し、次世代の人材育成が必須であり、またNLD党に対抗する別の党の躍進も必須です、軍事政権でも、NLD政権でも独裁政権を阻止することは重要かと思われます。